はじめに
皆さんは材料力学における「応力」と「応力状態」の違いを説明できますか?
材料力学を学び始めてすぐの人が最もつまづきやすいポイントだと思います。
この記事では、マクロな考え方である応力と、ミクロな考え方である応力状態を整理して、材料力学をより見通しやすく整理することを目指します。
応力と応力状態の違い
いきなりですが結論を言います。日本機械学会 機械工学辞典様の力を借りて、用語をまとめると、
応力:仮想面の単位面積当たりの内力
応力状態:物体内の一点においてその点を通る任意の面に作用する力の相互作用の状態
となります。これを、怒られるのを承知でとても乱暴にまとめると、
応力:力÷面積で算出。物体全体にどの程度の力が加わっているかを示す指標。
応力状態:物体の内部1点ごとに、実際に加わっている力の分布状態。
というイメージです。言い換えると、応力は、「異なる材料や、大きさの異なる同一物体同士の強さを比較するときなどに便利な、マクロ的な指標」と言え、応力状態は、「その物体に実際に加わっている力を評価して、物体が壊れるかどうかを判定するのに便利な、ミクロ的な指標」と言えます。
応力とは
一般に、応力σは下記の式で表すことができます。(ここでは垂直応力を例にとる)
\(σ=F/A \)
ここで、
F:外力[N]
A:仮想断面の面積[m2]
ここから、応力は「面積(物体の形状)に依存しない力の大きさ」を表していることがわかります。応力は、ひずみと線形な関係にあることが知られていて、有名なヤング率との関係は下記の通りあらわせます。
\(σ=Eε \)
ここで、
E:ヤング率(又は縦弾性係数)[N/m2 又はMPa(N/mm2)]
ε:ひずみ[-]
横軸にひずみ、縦軸に応力をとった図を応力ひずみ線図とよび、異なる物体同士の強度や降伏特性を比較するのにとても便利です(ググるとたくさん出てきます)。
では、ここで問題です。下記に示す条件で鋼製の丸棒は降伏するでしょうか?

これまで進めてきた通り、ボルトに加わる引張力を面積で割って応力を算出すると、300N/mm2と計算できるので、引張強さ320N/mm2より小さく、問題ないように思います。
ですが、実際はこの丸棒は降伏します。次にその理由を応力状態とともに見ていきましょう。
応力状態
前述した通り、物体に実際に加わっている力からその物体が壊れるかどうかを判定するには、応力状態を考える必要があります。
平たく言うと、「物体の中で力がどの向きに、どれだけの大きさで加わっているか」を考える必要があります。なぜかというと、材料の強さには異方性があり、向きごとに強度が異なるからです。
例えば、先ほど出てきた鋼だと、引張強さ(面に垂直方向の強さ)は320N/mm2と比較的強いのに対して、許容せん断力(面に平行方向の強さ)は90.4N/mm2と小さく、引張強さに対して約30%の強度しかありません。
よって、垂直方向の引張には耐えられても、同じ力でせん断力を加えると耐えられないということが発生します。
ですが、今回は垂直方向の力しか加えていないのに、なぜせん断力を考える必要があるのでしょうか?これには、見かけの力(高校の物理で習った力の分解)が効いてきます。

上の図のように丸棒を仮想的な断面でカットして、断面に加わる力の大きさを見てみましょう。
後で、断面の角度を変えたときの変化を見るために、角度はφとしておきます。
引張力Pは、力の分解から面に垂直な方向Nと、平行な方向Sに分けることができます。
それぞれの大きさは、角度φを使って、
\(N=P\cosφ\)
\(S=P\sinφ\)
と書けます。棒の断面積をA、単純な断面積と引張力から求められる応力をσとすると、斜面部の面積はA/cosφと書けて、引張力PはAσと書けるから、仮想断面に対する垂直応力とせん断応力は、
\(σ_n=N/A_φ=\dfrac{P\cosφ}{A/\cosφ}= \dfrac{Aσ\cosφ}{A/\cosφ}=\dfrac{σ}{2}(1+\cos{2φ})\)
\(τ=S/A_φ=\dfrac{P\sinφ}{A/\cosφ}= \dfrac{Aσ\sinφ}{A/\cosφ}=\dfrac{σ}{2}\sin{2φ}\)
と書けます。
何やら面倒なことになってきた気がしますが、もうひと踏ん張りです。
cos2φはφ=0°で最大となり、sin2φはφ=45°で最大となるので、垂直応力は力に対して垂直な面で最大、せん断応力は力に対して45°傾斜した面で最大となります。
また、φ=0°のときsin2φ=0なので、せん断応力はゼロとなります。このような面のことを主応力面、そこでの応力を主応力と呼びます。
さらに、せん断応力が最大となる面を最大せん断応力面と呼びます。
これを踏まえて先ほどの問題を考えてみましょう。

主応力はφ=0°の面に加わる応力であり、この場合垂直応力に等しいので、先ほど求めた通り300N/mm2です。
次に最大せん断応力を求めましょう。φ=45°の面において、最大せん断応力はσ/2です。よって、
300/2=150N/mm2 > 90.4N/mm2 となり、許容せん断応力を超えることがわかります。
実際の機械設計の場面でも、この図と同じように
①まず単純な応力を求める
②次に対象物の内部に加わる主応力と最大せん断応力を求める
③材料の引張強さと許容せん断応力と比べる
という手順をとることが多いです。そのときは上のやり方を参考に検討してみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は丸棒を対象に、簡単化した式を解きましたが、より一般的に使用できる公式も存在しています。それらは下記の教科書を参考にしてみてください。

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